
市販で売っているべったら漬けは甘すぎて食べるのが苦手。

べったら漬けは麹甘酒のみで漬けるとさっぱりとした甘さで作れるよ!
ブログで発酵教室!第八回目は、大根の「べったら漬け」の作り方をご紹介します。
市販のべったら漬けは甘味料が使われていることが多く、「甘すぎる!」と感じる方もいるかもしれません。そこで今回は、砂糖を使わず、麹甘酒の自然な甘さだけで作る方法をご紹介します。
べったら漬けで使う麹甘酒は濃縮タイプのものを使うのがオススメです。今回の麹甘酒は、前回の「ブログで発酵教室!」でご紹介した濃縮タイプの麹甘酒を使います。
また、べったら漬けは江戸時代から親しまれてきた日本の発酵食品です。その歴史についても触れながら、作り方を詳しく解説していきます。
「無添加のべったら漬けを作ってみたい!」「食べやすい甘さのべったら漬けが食べたい!」という方は、ぜひ最後まで見てください。
べったら漬けとは?
べったら漬けとは、塩漬けした大根を麹甘酒(麹甘酒と砂糖)で漬け込んだ、甘味のある漬物です。
作り方は、大根の皮をむき、塩漬けにした後、麹甘酒に漬け込みます。浅漬けのため、シャキシャキ、ポリポリとした食感と、麹甘酒のほんのりとした自然な甘さが楽しめます。
また、べったら漬けは、以前のブログでご紹介した三五八漬けと同じく、麹漬けの一種になります。
ごっくら漬け、がっくら漬け、なた漬け
べったら漬けは江戸(東京)発祥とされていますが、大根を麹甘酒で漬けたべったら漬けに似たものは東北地方にも見られます。
- ごっくら漬け(山形県)
- がっくら漬け(岩手県)
- なた漬け(秋田県)
昔の人は、大根と麹甘酒の相性の良さを自然と見つけていたのだと思います。
気になる方はぜひ調べてみてください。
べったら漬けの歴史
べったら漬けは江戸時代中期に生まれたとされる漬物です。漬物といえば食事やお酒のつまみとして食べるイメージがありますが、当時はお茶請けとして楽しまれていました。
また、江戸幕府第15代将軍・徳川慶喜の好物だったともいわれています。庶民にも広く親しまれていたことから、べったら漬けは身分を問わず多くの人に愛された漬物だったことがわかります。
江戸時代は砂糖が高価だった
江戸時代は、砂糖は高価なものであり、庶民にとって甘味は貴重なものでした。
そんな中、麹甘酒は手軽に買える甘い飲み物として、すでに庶民にも親しまれていました。
塩漬けした大根を麹甘酒で漬けて甘くするというべったら漬けのアイディアは、この時代背景があったからこそ生まれたものだと考えられます。
また江戸時代、漬物はたくあんや梅干しなど、毎日の食事に欠かせない存在でした。当時の漬物は塩漬けが基本で、冷蔵庫がない時代には保存性を高めるために塩分濃度が高く、「塩っぱい」ものが一般的でした。
だからこそ、べったら漬けのような甘味のある漬物は、人気があったのだと思われます。甘味が貴重だった時代、お茶請けとして、デザート感覚として食べられていたということも納得できます。
「べったら漬け」という名前の由来
べったら漬けは、大根を麹甘酒で漬けた漬物です。その名前の由来は、漬け上がった大根の表面がベタベタ、ベトベトすることから、「べったら」と呼ばれるようになったとされています。
江戸時代には、商人たちが縄で束ねたべったら漬けを手に提げ、「べったら(べとつくぞ!)」とはやしながら売り歩いていたそうです。当時の女性は着物を着ていたため、べったら漬けが服に付かないように逃げ回っていたという話もあります。
材料
- 大根
- 塩:皮をむいた大根の3%
- 麹甘酒(濃縮タイプ)
※一度麹甘酒のみで作ってみて、甘さが足りないという方は、砂糖も加えて作ってみてください。
①大根の皮をむき、カットする
【作成日:2025年2月6日(冬の寒い時期)】
大根をまず横に4等分し、その後、縦に半分にカットしました。
大根の切り方と漬ける時間のポイント
大根は厚く切るほど、塩や麹甘酒で漬ける時間が長くなります。
即席でべったら漬けを作りたい場合は、薄くスライスすると短時間で漬かります。

②大根の重さを計り、大根の3%の塩で漬ける(下漬け)
塩の量は、「大根の重さ×0.03」で計算して出します。

大根に塩をすり込むようにします。

ポリ袋に入れます。

重しを乗せる
重しを乗せることで、浸透圧の働きにより大根から水分が出やすくなります。塩水にも浸かりやすくなり、味もしっかり染み込みます。
重しの重さですが、大根の重さの2倍以上のものを使うといいと思います。今回は2.5kgの重石を使いました。重石がない方は、ペットボトルなどでも代用できます。
重しを乗せて、2日間置きます。

なるべく冷たい場所に置く
今回は室温が10℃以下の場所に置きました。
今回の塩分濃度は3%と低めに設定しています。塩分濃度を低くすることで塩っぱくならないメリットがあります。しかし塩分濃度が低くなると、腐敗のリスクも高まります。
そのため、暖かい時期に塩漬けをする場合は、冷蔵庫に入れるようにしてください。

③水気を拭いて、麹甘酒に漬ける(本漬け)
2日間下漬けしたものになります。大根から水分がよく出ていました。

キッチンペーパーで、塩水をよく拭き取ります。
塩水を水で流すことはしなくて大丈夫です。

ジッパー袋に大根と濃縮タイプの麹甘酒を入れてよく揉み込みます。
昆布や唐辛子をカットして入れるのもオススメです。

空気を抜くようにしてチャックをしたら、冷蔵庫で2日以上漬けます。

④できあがり
冷蔵庫に入れて3日後に開封しました。
大根の水分は、麹甘酒に漬けた後も出てきます。水分により味が薄まるため、麹甘酒は濃縮タイプのものを使うのがオススメです。

べったら漬けは、厚めに切ると食感を楽しめるのでおすすめです。
麹甘酒だけで漬けたべったら漬けは、自然な甘さとさっぱりとした味わいが特徴です。後に引かない甘さで、とても食べやすい味に仕上がっていました。
塩分濃度は3%と低めにしているので、塩っぱさを感じずに食べられると思います。もう少し塩気がほしい場合は、次回は塩分濃度を4%にして作ってみてください。
甘さが物足りないと感じる場合は、漬けた麹甘酒を上からかけて一緒に食べてみてください。

べったら漬けの食べ方アレンジ
鰹節を添えると、旨味が加わり、より深い味わいが楽しめます。
ゆず陳皮と合わせてみたところ、爽やかな香りが引き立ち、さっぱりとした味わいになりました。

私の一番のオススメは大葉を巻いて食べることです。
大葉の爽やかな風味とべったら漬けの甘さがよく合います。

刻みネギ、自家製豆板醤と合わせてもおいしく食べられました。

手作りの良さとは
手作りの良さは、自分で味の調整ができることです。
べったら漬けは、市販のものが甘すぎて食べられないという方も多いですが、手作りでさっぱりとした味にすることで食べられるようになる方もいます。
手作りすることで、自分に合った味の調整ができるため、より美味しく食事を楽しむことができるようになります。
また、手作りすることで、それが何から作られているのか、原材料がわかるようになります。そうすることで、市販のものを選ぶ際のポイントも見えてきます。
さらに、手作りをすることで、自分の味覚や食べるものに対して意識が向くようになります。これにより、選ぶものが変わり、自然と食生活も変化していきます。健康的な食生活に意識が向くようになることで、体調管理もしやすくなります。
手作りは、作る喜びや達成感を味わえるだけでなく、身体にも嬉しい影響を与えてくれます。
発酵の世界を通じて、ぜひ手作りの楽しさを体験してみてください。
参考文献
- 前田安彦(著者)『新つけもの考』岩波書店、1987年3月20日第2刷発行
- 小川敏男(著者)『漬物と日本人』日本放送出版協会、1996年11月25日第1刷発行
- 中野政弘(著者)『発酵食品』光琳、平成元年6月15日3版
- ferment books(ファーメント・ブックス)・おのみさ(編・著)『発酵はおいしい!イラストで読む世界の発酵食品』株式会社パイ インターナショナル、2019年12月21日初版第1刷発行
- 小泉武夫(著者)『絵でわかるシリーズ 絵でわかる麹のひみつ』株式会社講談社、2015年2月25日第1刷発行
- 村上英也(編著)『麹学』日本醸造協会、平成30年4月5日第6版発行
- 『うかたま64号』農村漁村文化協会、2021年10月1日発行(ごっくら漬け)
- 『うかたま51号』農村漁村文化協会、2018年7月1日発行(がっくら漬)
- 北村英三・石川健一(編)『つくって あそぼう[32] 漬けものの絵本2 ぬかみそ·たくあん·こうじ漬け』農山漁村文化協会、2009年6月20日第1刷発行