
発酵あんこを作ってみたけど、甘くならなかった。

ぼくも甘くならなかった。発酵あんこって甘くないものなの?

発酵あんこは「ご飯を加えること」で甘く美味しいものが作れるよ!
ブログで発酵教室!第九回目は、「甘くて美味しい発酵あんこ」の作り方をご紹介します。
「発酵あんこを作ってみたけれど、甘くならなかった」「美味しくできなかった」など、発酵あんこの作り方で悩まれている方は多いのではないでしょうか。
発酵あんこは、砂糖を使わずに作れるので糖質オフでヘルシー。米麹の栄養成分も摂ることができ、消化吸収にも優れています。甘くて美味しい発酵あんこが作れるようになれば、発酵生活がもっと楽しくなります。
今回は、炊飯器を使って発酵あんこを実際に作りながら、「甘くて美味しく仕上げるためのポイント」をわかりやすく解説していきます。
「甘くて美味しい発酵あんこを作ってみたい!」という方は、ぜひ最後までご覧ください。

発酵あんこの発酵の仕組みと、甘くならない原因
発酵あんこは、煮た小豆に米麹を加えて、8~14時間程度発酵させて作ります。
米麹を加えることで、米麹の酵素(アミラーゼ)の働きにより、小豆のデンプンと米麹自身のデンプンが分解されて、甘味のもとであるブドウ糖が生まれます。
「発酵あんこが甘くならない」大きな原因は、小豆に含まれるデンプンの量がそもそも少ないためです。デンプンの量が少ないと、分解されて生まれるブドウ糖の量も少なくなり、甘さが控えめになります。
発酵あんこを甘く作るためには、適切な水分量で仕込んだり、酵素反応が起こりやすいようにしっかりかき混ぜるなど、いくつかのポイントがあります。ただ、そうした工夫をしても、どうしても通常のあんこと比べると甘さは控えめになります。
甘い発酵あんこを作りたい場合は、炊いたご飯を加えて、全体のデンプン量を増やすことです。そうすることで、最終的に生まれるブドウ糖の量も多くなり、甘い発酵あんこになります。
今回は、単にご飯を加えて作るだけでなく、甘い発酵あんこを作るためのポイントについても詳しく解説していきます。

材料
- 小豆200g
- 炊いたご飯:50g
- 乾燥麹:200g
この分量で一度作り、もっと甘味を強くしたい場合は、炊いたご飯の量を100gまでの量で増やして調節してみてください。ご飯を増やすことで、全体のデンプン量が多くなり、より甘い発酵あんこに仕上がります。
①小豆を煮る
小豆を水洗いしたら、鍋に水を加えて沸騰させます。今回は水3カップを加えました。
小豆は大豆のように水分を吸収しないので、前日に浸水させる必要はありません。
ご飯を炊いておく、お湯を沸かしておく
小豆を煮た後に加えるご飯を炊いておきます。冷凍したご飯、すでに炊いてるご飯を使う場合は、加える前に再度温めるようにします。
お湯を沸かしてポットにとったものを使うようにすると、お湯の温度が下がることがなく、小豆を煮る時間を短縮することができます。

②茹でこぼす
沸騰してきたら、弱火にして10~20分程度煮た後、茹でこぼします。

茹でこぼしとは
茹でこぼしとは、食材の持つアクや渋みを取り除くため、沸騰させた煮汁を捨てて新しい水に入れ替えることをいいます(「渋切り」ともいう)。
茹でこぼしをするのとしないのとでは、どのように味が変わるのか実験してみました。気になる方は少し長いですが、読んでみてください。
③柔らかくなるまで小豆を煮る
水3カップを加えて、再度沸騰させて、沸騰してきたら弱火にして小豆が柔らかくなるまで煮ていきます。

途中でかき混ぜる
かき混ぜることで、場所による煮えムラを防ぐことができます。
足し水(湯)をする
煮汁が少なくなってきたら、水(お湯)を加えるのを忘れずに。

食べて芯が残っていないか確認する
小豆は指で簡単に潰れるようになるまでしっかりと煮てください。
小豆は自然と潰れてしまうものが出てきますが、それでも問題ありません。
茹でこぼしから1時間程度煮れば、十分柔らかい状態になると思います。

④煮詰める
小豆を潰すようにしながら、デンプン質が煮汁に溶け出すように煮詰めていきます。
小豆のデンプン質が溶け出すことで、米麹の酵素と触れ合うようになり、酵素反応が起こりやすくなります。
また、煮汁が多い状態で発酵させると、できあがりの発酵あんこは水っぽくなり、甘さが弱くなります。煮詰めながら水分を適度に飛ばすことで、濃厚で甘味のある発酵あんこに仕上がります。
今回は木べらで焦げないようにかき混ぜながら10分程度煮詰めました。

⑤ご飯を加える
煮詰めた小豆はボウルに移してご飯を加えてよくかき混ぜます。

⑥63℃以下になったら米麹を加える
米麹の酵素が失活しない温度まで下がってから米麹を加えて、よくかき混ぜます。
温度が下がりすぎないように、手早くかき混ぜることがポイントです。

この時点でしっかりと混ぜ合わせてあげることがポイントです。
少し力がいり、大変な作業ですが、頑張りましょう!

⑦50~65℃で8~14時間程度発酵させる
発酵あんこは炊飯器の内側に敷き詰めるように入れてください。上から押すような気持ちで、隙間が出ないように詰め込みます。
発酵に入る前の理想の温度は、50~60℃です。
今回は温度が50℃を下回ってしまいましたが、「白米急速(早炊きモードのこと)」などで温度を上げることはせず、発酵に移りました。
発酵あんこは粘土が高く、麹甘酒のように液体状のゆるさがありません。「白米急速(早炊きモードのこと)」などで温度を上げようとすると、中心部分まで熱が伝わらずに外側の周りの部分のみが急激に熱くなってしまう恐れがあります。
発酵に移る前の温度が50℃を下回っていたとしても、無理に温度を上げようとせず発酵に移るようにしてください。

ヨーグルトメーカーがあると温度管理が非常に楽になります。

蓋の開け具合で温度調節をする
今回は温度が50℃を下回っていたので、菜箸を手前にして蓋の開け具合を狭くして、温度が高く保たれるようにセットしました。

マスキングテープは、はがしやすく、貼り直しもしやすいため、とても便利です。

1時間を過ぎたらかき混ぜて様子を見る
温度のチェックと水分量のチェックを行います。
表面は空気と触れているため、乾燥しやすいです。かき混ぜることで、全体の水分量と温度を均一にすることができます。
発酵あんこの水加減
発酵あんこは、水分が多すぎるとできあがりが水っぽくなってしまい、逆に少なすぎると発酵(加水分解)が進みにくく、米麹の硬さも残ったままになってしまいます。
水分の加減は、何回か作っていく中で自然と掴めていく部分ではありますが、参考までに私のやり方をご紹介します。
発酵に入る前の段階では、水分が少なくてパサパサしているように見えても、米麹が煮汁の水分をしっかりと吸収していれば大丈夫です。
発酵から1時間を経過した後に、様子を確認します。米麹を食べてみて柔らかさが出ていれば、水分を加える必要はありません。米麹が水分を含んでいれば、加水分解が始まり、発酵前よりも水分が感じられるようになっていると思います。その水分をかき混ぜながら、全体に行き渡らせてください。
逆に、1時間を経過しても米麹の硬さが発酵前と変わらないで、かき混ぜた時に水分も感じられない場合は、水分を足してあげる必要があります。

4時間が経過
温度が65℃を超えていたので、しっかりとかき混ぜながら温度を下げて、蓋の開け具合を広くとるようにセットしました。

12時間が経過
今回は12時間30分くらいで取り出しました。
発酵させる時間は何時間と決まっているわけではありませんが、10時間以上発酵させると甘味がしっかりと出てくるようになります。取り出すタイミングは生活とのバランスで考えて頂ければいいと思います。

⑧タッパーなどに小分けして冷凍庫で保存する
5日以内に食べる分は冷蔵庫、すぐに食べない分は冷凍庫で保存してください。
食べきりサイズのタッパーに小分けにしておくのがオススメです。
今回の分量だと700g程度とることができました。

発酵あんこはトーストの上にのせたり、豆乳ヨーグルトなどと混ぜて食べると美味しいです。
お餅、きな粉との相性も良いです。

まんじゅう用のあんことして使うときの注意
完成後加熱していない発酵あんこは生甘酒と同じく、酵素が活性している状態です。
小麦粉の生地に発酵あんこを包むと、生地が分解されてドロドロの状態になってしまいます。
まんじゅう用のあんことして使うときは、フライパンなどで加熱して発酵あんこの酵素を失活させるようにしてください。
また、まんじゅう用のあんこは硬く粘り気がある方が包みやすいです。加熱して、水分を飛ばすように煮詰めながら粘り気を高めていきます。その後粗熱を取り、冷蔵庫で一日寝かせてあげると使いやすくなります。


発酵あんこを煮詰めるときに、塩を加えると甘味が引き立ちます。
私は塩の代わりに白味噌を加えながら煮詰めることで、甘さを引き出すようにしています。

最後に
発酵あんこは、通常のあんこを作るよりも時間と手間がかかります。
しかし、米麹の糖化作用を十分に活用して甘く美味しい発酵あんこを作れると、麹に対する面白み、手作りの喜びや達成感もより深いものになります。また、からだにやさしい発酵あんこは誰からも喜ばれると思います。
発酵あんこの作り方は、「かたづくり甘酒」の応用になります。発酵あんこの作り方の理解を深めたいという方は、かたづくり甘酒の記事を参考にしてみてください。
一つずつ自分にできること、作れる発酵食品を増やしていくことで自分に対する自信がつき、発酵ライフもより楽しいものになっていくと思います。
ぜひ楽しみながら発酵の世界を味わってみてください。
参考文献
- 「発酵あんこのおやつ」藤井寛(監修)木村幸子(著者)2020年2月28日 第1版第1刷発行
- note 真野遥|発酵室 よはく
「【決定版】麹の優しい甘みがおいしい「発酵あんこ」の作り方とおすすめアレンジ」
https://note.com/harukamano/n/nbc27cb6ddebd