麹の自然な甘味が魅力!昔ながらの三五八漬けの作り方

発酵ライフ

皆さん、こんにちは。
麹の仲間たちの長谷川です。

三五八漬け(さごはちづけ)とはご存じでしょうか?

三五八漬けとは、福島県や山形県など東北地方で古くから家庭で作られてきた、麴で漬けた伝統的な漬物です。

自然な甘さとサッパリとした味わいで食べやすく、ご飯にもよく合います。

作り方はとても簡単です!三五八漬けの素にお好みの野菜を1~2日漬けるだけで、手軽に美味しい漬物が出来上がります。

今回は、三五八漬けの素を昔ながらの常温発酵で手作りする方法と、三五八漬けの漬け方についてご紹介します。

昔ながらの三五八漬けを作りたいという方は、ぜひ最後までご覧ください。

三五八漬けの名前の由来と歴史

三五八漬けの名前の由来は、漬け床の割合を「塩:米麹:米(ご飯または蒸米)=3:5:8」で作ることから来ているといわれています。

三五八漬けは「麹漬け」と呼ばれる漬物の一種であり、麹漬けには他にもべったら漬けかぶら寿司などがあります。

麹漬けは、砂糖が貴重な時代に、麹の自然な甘味を利用することで生まれた漬物です。三五八漬けは東北、べったら漬けは東京、かぶら寿司は北陸など、地域性があるところも面白く感じます。

三五八漬けは塩麹のルーツともいわれており、江戸時代にはすでに存在していたといわれています。

塩麹と三五八漬けの素の違い

塩麹は米麹と塩で作るのに対して、三五八漬けの素はご飯と米麹と塩で作ります。ご飯を加えることで、甘味がしっかりと出るようになります。

甘い漬物を作りたい場合は、塩麹よりも三五八漬けの素を使ってみるといいと思います。

三五八漬けの素は、漬け床としてだけでなく、塩麹と同様に塩の代わりの調味料としても使うことができます。塩味だけでなく甘味もプラスしたい場合は、三五八漬けの素を使ってみるといいと思います。

三五八漬けの素の作り方は二通りある

一つは濃縮タイプの麹甘酒を作り、そこに塩を加えて冷蔵庫で2~3日味を馴染ませて作る方法です。

こちらの作り方は、冷蔵庫で味を馴染ませることで、塩分濃度を低く抑えることができます。塩分濃度を低く抑えることで、甘く食べやすい三五八漬けを作ることができます。

8%前後の塩分濃度になるように塩の量を調節すると塩辛さが抑えられます。

もう一つは、炊いたご飯に米麹と塩を加えて、常温で発酵させて作る方法です。1~2週間程度常温で発酵させた後は冷蔵庫で保存します。

こちらの作り方は、常温で発酵させるため塩分濃度を10%以上入れる必要があります。減塩はできませんが、常温で一週間以上発酵させることで味に深みがある三五八漬けの素を作ることができます。

※常温で発酵させる場合は、なるべく涼しい部屋を見つけて、直射日光が当たらない冷暗所に置くようにしてください。

塩分濃度について

常温(室温)で発酵させる場合は、塩分濃度を10%以上入れることをオススメします。

10%以上の塩分濃度を確保することで、雑菌が繁殖しにくい環境を作ることができるからです。

昔の三五八漬けの素の作り方のレシピを調べてみると、塩分濃度が10~15%程度含まれているものが多くあります。それは以下の理由からだと思われます。

  • 常温で発酵(熟成)させるため
    ・塩、米麹、ご飯を混ぜて常温で発酵させるため
    ・麹甘酒を作り、塩を加えて常温で味を馴染ませるため(熟成させる)
  • できた後も常温で保存するため(量を作ると冷蔵庫に入らない)

今回のレシピのポイント

  • 常温で発酵させるため、塩分濃度を10%以上で作る
  • 1~2週間を目安に常温で発酵させる
  • 味ができてきたら冷蔵庫、または冷凍庫で保存する

材料(塩分濃度10%)

  • お米:450g(3合)
  • 乾燥麹:400g
  • 水(乾燥麹を戻す):400ml
  • 塩:200g

※固体はg、液体はmlで分けて記載しましたが、水の場合、gとmlは同じになります。
※今回の乾燥麹は麹の仲間たちの「甘酒用の乾燥麹」を使用しています。
※お米の炊き上がりの重さは1012gでしたので、1000gとして塩分濃度を計算しました。

①お米を炊く

作業日:2024年10月17日

お米3合に炊飯器の目盛りで3合のラインまで水を入れて炊飯します。

炊飯をする前:内釜に洗米したお米と水を入れる
3合分のお米を炊く
炊飯スイッチを押す
普通炊飯でOK

①’乾燥麹を水で戻しておく

ご飯を炊いている間に、乾燥麹を水で戻しておきます。

乾燥麹と同量の水(今回は400ml)を加えたら、麹に水分を吸収させるようによく混ぜます。

水分の蒸発を防ぐためのラップをかけたら、麹が芯まで水分を吸収して、柔らかくなるまで待ちます。

乾燥麹を予め水で戻しておく理由

三五八漬けの素は、できあがりがゆるく、味が薄まらないように、水分量をなるべく少なくして仕込みます。そうすることで、ドロッとしていて、濃厚な味の三五八漬けの素を作ることができます。

しかし、水分量を少なく仕込むことで、麹の芯まで水分が行き届かないことがあり、できあがり後も麹の硬さが残ってしまうことがあります。また麹が水分を十分に吸収していないことで、麹の酵素の働きが不十分で、甘味や旨味が弱いできあがりになることがあります。

乾燥麹を予め水で戻しておくことで、麹の芯まで水分をしっかりと吸収させることができます。そうすることで、麹は柔らかくなり、酵素分解も起こりやすい状態になります(甘味や旨味が生まれやすくなる)。

※麹の酵素は加水分解酵素と呼ばれ、水分のあるところで働く酵素になります。

乾燥麹を水で戻す作業
乾燥麹は予め水で戻しておく

ラップをして1時間30分が経過した様子です。麹が水分を吸収して膨れていました。

水で戻した乾燥麹
麹が水分を吸収して膨らむ

乾燥麹の硬い状態から、柔らかい状態になっていました。

水で戻した乾燥麹
麹が水分をしっかりと吸収している

②ご飯を大きめのボウルの中で冷ます

ご飯が炊けたら大きめのボウルに移して、木べらでかき混ぜながら温度を冷ましました。

大きめのボウルに移すことで温度が早く冷めるだけでなく、麹を加えた後のかき混ぜる作業もしやすくなります。

ご飯の炊き上がり

温度計で温度の下がり具合を確認しながら、65℃以下になるように冷ましていきます。

ご飯をボウルの中で冷ます
65℃以下に温度が下がるのを待つ

③65℃以下に温度が下がったら、麹と塩を加えてよくかき混ぜる

ご飯に塩、米麹を混ぜる
しっかりとかき混ぜる

力を使う作業ですが、この時点でしっかりとかき混ぜることで、発酵がスムーズに進みます。

木べらでご飯、塩、米麹がよく混ざるようにかき混ぜる
かき混ぜるのが重い。。

④発酵させる容器に移す

よくかき混ぜたら、発酵させる容器に移します。

マッシャーを使うと混ざりやすくなる

塩、麹、ご飯がよく混ざるようにマッシャーを使いました。

マッシャーを上から押し当てるようにすると、ご飯と麹の粒が潰れて細かくなり、全体が混ざりやすくなります。

マッシャーでご飯と麹の粒を潰して細かくする
最後の念押し

発酵に移る前は、表面を平らにして、キッチンペーパーでふちをきれいに拭くようにします。

三五八漬けの素の仕込み完了
仕込み完了

蓋が開かないように、サランラップを一枚かませてから蓋をしました。

冷暗所において、常温発酵スタートです。

仕込み完了:10月17日10時頃

室温23℃
冷暗所で保管

三五八漬けの素の発酵の仕組み

三五八漬けの素は、甘味と旨味、塩味が調和した「あまうまじょっぱい」味が特徴です。

三五八漬けの素の材料は、「ご飯+米麹+塩」です。

三五八漬けの素は、塩分がある中で麹甘酒を作るイメージです。塩分があることで微生物(雑菌)の繁殖を防ぐことができるため、常温でもゆっくりと発酵を進めることができます。

ご飯と米麹自身のデンプンとタンパク質が、米麹に含まれる酵素により分解されることで徐々に甘味と旨味が生まれ、塩味とも馴染んでいきます。

発酵が進むことで、フタを開けたときに麹甘酒のような甘い香りがするようになります。

⑤常温で発酵スタート

常温で発酵させるときは、なるべく涼しい部屋を見つけて、直射日光の当たらない冷暗所に置くようにします。

常温で発酵させる場合は、1~2週間を目安にするといいと思います。

毎日かき混ぜる必要はなく、3日~1週間で一度様子を見てかき混ぜてあげるといいと思います。味を見た感じで、その後どの程度発酵させるか判断してください。

発酵させてから3日目(10月20日14時頃)

室温22℃
発酵させてから3日目

フタを開けると甘い香りがしました。表面には水分が出てきていました。

発酵させて三日目の三五八漬けの素の様子
発酵させてから3日目

全体を均一にするようによくかき混ぜました。かき混ぜることで酵素分解が起こりやすくなり、甘味や旨味が生まれやすくなります。

食べてみると甘塩っぱい味でした。麹の粒の硬さは残っていましたが、食べても気にならない程度の柔らかさになっていました。

発酵させて三日目の三五八漬けの素の様子
発酵させてから3日目

再び発酵させるために容器のふちをキッチンペーパーで拭き取り、ラップをかませてフタをしました。

発酵させて三日目の三五八漬けの素の様子
発酵させてから3日目

発酵させて6日目(10月23日11時頃)

室温21℃
発酵させてから6日目
発酵させて六日目の三五八漬けの素の様子
発酵させてから6日目

前回よりも旨味が増していました。甘味と旨味があり、最後にしょっぱさが感じられ、甘旨じょっぱい味に変化していました。

発酵させてから3日目の頃よりも味がよく出ていて、味のまとまりも感じられました。

麹の粒の硬さは多少残っていましたが、全く気にならない程度になっていました。

発酵させて六日目の三五八漬けの素の様子
発酵させてから6日目

きゅうり、なす、ピーマン、にんじん、カブを漬けてみることにしました。

カットしたきゅうり、なす、ピーマン、にんじん、カブ
漬けやすいようにカットしておく

三五八漬けの漬け方は、ジッパー袋に野菜と三五八漬けの素を入れて、しっかりと揉み込みます。三五八漬けの素の量は野菜に対して10分の1程度で大丈夫です。

ジッパー袋を使うと、揉み込むことができ、空気を抜くようにチャックをすることで、よく密着するので、三五八漬けの素の量が少なくてもしっかりと漬けることができます。またコンパクトにまとめられるため、冷蔵庫の場所も取りません。

ジッパー袋に野菜と三五八漬けの素を入れて、よく揉み込む
しっかりと揉み込む

空気を抜くように、なるべく真空状態になるようしてチャックをとじます。そうすることで、味がよく染みこみ、漬かるのも早くなります。コンパクトにまとめたら、冷蔵庫に移してください。

三五八漬けの仕込み完了
小さくまとめることで冷蔵庫にも入りやすい

三五八漬けの漬ける日数について

漬ける日数は三五八漬けの素の塩分濃度、野菜の切り方によっても変わってきます。

野菜を漬ける場合は、12~24時間を目安にするといいと思います。

塩分濃度が高く、塩味の強い三五八漬けの素で漬ける場合は、早く漬かります。

早く食べたい場合は、野菜を一口サイズに予めカットしておくと早く漬かります。

できあがり

丸一日(24時間)漬けてみました。野菜から水分がよく出ていました。

一日漬けた三五八漬け
水分がよく出ている

かぶとにんじんは塩味(しょっぱさ)がちょうどいい感じでした。今後漬けるときも丸一日でいいと思いました。きゅうりとなすは塩味を強く感じました。今後漬けるときは12~24時間で調整しようと思いました。

※ピーマン、かぶの葉も漬けてみましたが、苦みはとれませんでした。

三五八漬けのオススメの野菜

三五八漬けの定番は、きゅうり、なす、にんじん、かぶ、大根だと思います。

私のオススメはズッキーニ、ミョウガです。

塩っぱいと感じたら

三五八漬けの食べ方ですが、麹の粒は基本的に拭き取らないで食べます。

食べてみて塩っぱさを感じたら、麹の粒を拭き取ってあげると塩味が和らぎます。それでも塩っぱさを感じる場合は、水で軽く洗いながしてから食べてみてください。

醤油には塩味を和らげる効果があります。塩っぱさを感じたら、醤油を垂らしてあげると食べやすくなります。

茄子、ピーマン、カブ、きゅうり、にんじんの三五八漬け

常温発酵から冷蔵庫へ

今回は常温で発酵させて12日目に冷蔵庫に移しました。

発酵させて6日目には甘味だけでなく、旨味も感じられるようになっていましたが、12日目になると甘味と旨味がより馴染んでいて、一体感が感じられる味になっていました。フタを開けたときに香る麹甘酒のような甘い香りも6日目よりも感じられるようになっていました。

冷蔵庫の中でも発酵はゆっくりと進んでいます。時間が経つほどに甘味と旨味、塩味はよく馴染んでいき、より美味しく、使いやすい味になっていきます。

三五八漬けの素の保存について

冷蔵庫で保存することで一ヶ月はゆっくりと持ちます。

私は一ヶ月以内に使う分は冷蔵庫に保存して、それ以降になりそうな分はジッパー袋に小分けして冷凍庫に保存しています。

三五八漬けの素+濃縮タイプの麹甘酒

塩っぱいと感じたら、漬けるときに少しだけ濃縮タイプの麹甘酒を加えてみてください。

濃縮タイプの麹甘酒は自宅でも作ることができます。

同じようにしっかりと揉み込みます。

かぶとにんじんを三五八漬けの素と濃縮タイプの麹甘酒で漬ける

小さくまとめたら冷蔵庫に移します。

かぶとにんじんを三五八漬けの素と濃縮タイプの麹甘酒に漬けてジッパー袋をとじたもの

一日漬けた様子です。

かぶとにんじんを三五八漬けの素と濃縮タイプの麹甘酒に1日漬けたもの

塩っぱくなく、甘味がよく感じられて、美味しく出来上がりました。

かぶとにんじんを三五八漬けの素と濃縮タイプの麹甘酒に一日漬けて切ったもの

きゅうりと茄子も同じように漬けてみたところ、美味しく漬かりました。

茄子ときゅうりを三五八漬けの素と濃縮タイプの麹甘酒に一日漬けて切ったもの

三五八漬けの素は使い切りが基本

三五八漬けの素は、ぬか床のように手入れしながら育てていくタイプのものではなく、使い切りが基本になります。

ジッパー袋に野菜と三五八漬けの素を入れて漬けた場合、野菜の水分により三五八漬けの素の味は薄くなります。二回程度までなら美味しく漬けられます。

二回目は味が薄くなっているので、野菜を薄くカットしてから漬けると味が染みこみやすくなります。

三五八ドレッシング

野菜の水分により薄まってしまった三五八漬けの素は三五八ドレッシングに活用できます。

  • 米酢とオリーブオイルで味付けをする
  • 塩味が強く感じる場合は、水を加えて薄める
  • 麹甘酒の甘味を加えて味を調節するのもオススメ
三五八ドレッシング
三五八ドレッシング

最後に

漬物があるとご飯がよく進む、美味しく感じられる、そんな経験はないでしょうか。

ご飯とおかずの間に漬物を挟むことで、口の中がさっぱりリフレッシュされ、次の一口が美味しく感じられるようになります。ご飯とおかずだけでは味に慣れてしまいがちですが、漬物が味の変化をもたらし、最後まで食事を美味しく楽しむ手助けをしてくれます。

三五八漬けは、漬物初心者にピッタリの漬物です。ぬか漬けのようにぬか床を定期的にかき混ぜたり、足しぬかや塩を加えて味を調整する必要がないため、誰でも気軽に始められます。

三五八漬けの素を自分で作るのが大変という方は、スーパーや通販サイトなどで購入してみるのもいいと思います。

三五八ライフ、ぜひ始めてみてください。

参考文献

1)『日本の食生活全集 06聞き書 山形の食事』(出版:農山漁村文化協会)

2)『日本の食生活全集 07聞き書 福島の食事』(出版:農山漁村文化協会)

※『日本の食生活全集』は大正末期から昭和初期にかけての食生活が聞き書という形でまとめられています。昔の日本人の食生活を知ることができる、非常に貴重な全集です。

『日本の食生活全集 06聞き書 山形の食事』、『日本の食生活全集 07聞き書 福島の食事』によると、三五八漬けの素は冬の寒い時期に作られるものでした。昔の人が三五八漬けの素をどのように作っていたのかを知りたい方はぜひチェックしてみてください。

3)NHK『小雪と発酵おばあちゃん「会津若松 三五八」』

NHKで放送されている『小雪と発酵おばあちゃん』は、俳優である小雪さんが日本各地の発酵食品作りの達人である発酵おばあちゃん(おじいちゃん)を訪ねる番組です。

三五八漬けの回では、福島県にある「石橋糀屋」さんに訪ねて、麹の作り方から教えてもらう回でした。麹づくりに興味がある方は、ぜひチェックしてみると面白いと思います。

今回の記事のレシピは、『小雪と発酵おばあちゃん』の番組サイトのレシピ「三五八の素」を参考に、自分なりに試行錯誤しながら作ったものになります。

4)発酵デパートメント(ただいま発酵中)『【#136】米の融通がきく裕福さの象徴としての「麹漬け」!京都のべったら漬け・麹リテラシーが高い会津若松の三五八漬け談を添えて。|漬け物<3>

「ただいま発酵中」は発酵デパートメントが運営する発酵ラジオです。「発酵が好き」「発酵のことをもっと知りたい」という方にはピッタリのラジオです。