皆さん、こんにちは!
麹の仲間たちの長谷川です。
醤油の仕込みから一年が経過したので、搾り、火入れの作業を行いました。
醤油もろみ(食塩水に醤油麹を仕込んだもの)を一年間かき混ぜていくと、発酵の変化や味がだんだんと醤油に近づいていくのが確認でき、愛着を持って一年間育てることができました。
かき混ぜる間隔が空いてしまい産膜酵母(さんまくこうぼ)を発生させてしまうこともありましたが、無事自家製醤油を完成させることができました。
今回は醤油もろみの発酵・熟成の経過の様子、搾り、火入れの作業について自家製醤油の完成までの道のりを書いていきたいと思います。
現在醤油を作られている皆さん、これから搾り、火入れの作業をする皆さんの少しでも参考になれば嬉しいです。
醤油の発酵・熟成
仕込み日は20222年12/14です。
冬の室温が低い時期に仕込みました。
仕込みの様子についてはこちらの記事に書いていますので、ご覧ください。
仕込んでからの一週間は食塩水を全体に行き渡らせて腐らない状態を作るために毎日かき混ぜました。
これからどのように醤油もろみが変化していくのか見ていきましょう。
仕込んでから一週間以上が経過しました。
色が少し変わってきました。全体が馴染んできたように感じます。
まだまだしょっぱいです。
香りが少し出てきました。
醤油の香りが出始めてきました。
しょっぱさだけでなく、旨味が出てきました。
一ヶ月経過
仕込んだ当初の頃と比べると色が変化してきたのがわかります。
三ヶ月経過
醤油もろみの固体部分と液体部分が分離しなく、混ざり合う状態になってきました。
四ヶ月経過
5月に入りだんだんと室温が上がってきました。
これからの季節は発酵が進みやすくなってきます。
五ヶ月経過
醤油の味になってきました。
しょっぱさが強めの醤油という感じです。
固体部分が上に押し上げられていました。
六ヶ月経過
旨味がよく感じるようになってきました。
七ヶ月経過
醤油もろみの表面を白く覆っているカビのようなものは「産膜酵母」といいます(カビではなく、酵母です)。
産膜酵母は酵母の一種であり、空気があるところを好むため、醤油もろみの表面部分に発生します。
産膜酵母は無害ですが、たくさん出てくると味や香りを損なうとされています。
産膜酵母が出てきても醤油もろみの中に沈めるようにしてかき混ぜてあげれば問題ありません。
産膜酵母の発生は醤油を手づくりをされている方は一度は体験していることと思います。失敗ではないので、絶対に捨てないようにしてください。
産膜酵母を発生させないよう、醤油もろみは定期的にかき混ぜてあげることが大切です。
私は定期的にかき混ぜるというより、気づいた段階でかき混ぜることが多く、産膜酵母をよく発生させてしまいました。
皆さんはどうでしょうか。
八ヶ月経過
夏の暖かい時期はかき混ぜる頻度を上げていましたが、産膜酵母が発生してしまうことがよくありました。
九ヶ月経過
固体部分が上に押し上げられていました。
十ヶ月経過
旨味が強く感じるようになってきました。
うまじょっぱいという感じです。
産膜酵母が発生していますが、今回は早い段階で気づくことができました。
十二ヶ月経過
仕込んだ頃と比べると醤油麹の大豆の形が大分溶けているのがわかると思います。
最初の頃はかき混ぜた時にサラサラとしていましたが、現在はトロトロの状態になっています。
色も明確に醤油らしい色に変わりました。
搾り
醤油もろみの固体部分と液体部分を分ける作業を「搾り」といいます。
今回は醤油もろみの搾りは二回に分けて行いました。
最初からさらしの上に醤油もろみをのせて搾ってもよかったのですが、目詰まりを起こして時間が余計にかかるかもしれないと思ったので今回は二回に分けてみることにしました。
スープこしに直接醤油もろみを入れて、液体部分が自然に下に落ちるのを待ちました。
最後は固体部分を軽く押すようにして搾りました。
スープこしでは編み目が大きいので、味噌のような色合いになりました。
醤油もろみの固体部分を「醤油粕」といいます。
醤油の旨味は大豆のタンパク質を麹菌の酵素(タンパク質分解酵素)により、アミノ酸に分解することで生まれます。
醤油粕は麹菌の酵素(タンパク質分解酵素)が活性している状態のため、漬け床として活用することができます。
家庭での搾りは、完全に搾りきることが難しいので、液体部分が多少残った状態になります。漬け床としては使いやすい状態だと思います。
醤油粕は1kg満たないくらいの量がとれました。
醤油粕は要冷蔵です。
今回はすぐに使わないのでジップロックに入れて冷凍庫に入れました。
搾りの2回目を行いました。
スープこしの上にさらしを一枚敷いています。
最後の方は目詰まりを起こしてしまい、下に液体が落ちていかなかったのでスプーンで目詰まりを解消してあげるようにしました。
醤油もろみを搾ったままのものを「生揚げ醤油(きあげしょうゆ)」といいます。
生揚げ醤油は酵母、乳酸菌などの微生物が活動しているため、スーパーなどには流通していないので、手づくり醤油ならではのものです。醤油メーカーの直売所では販売をしているところもあります。
生揚げ醤油は要冷蔵です。
二回目の搾りでとれた醤油粕です。
火入れ
火入れは酵素の失活と微生物を死滅させること、味と香りの調整をする目的があります。
今回は85℃以上で10分程度行いました。
生揚げ醤油と火入れ醤油の味比べ
生揚げ醤油は旨味としょっぱさを強く感じるのに対して、火入れ醤油は香ばしさがプラスされて、複雑な旨味も感じるようになりました。
使う用途によりどちらが適しているかは変わると思いますが、火入れをすることで醤油らしい香ばしさが生まれるのは確かだと思いました。
通常火入れ醤油という言い方はしませんが、生揚げ醤油と分けるために火入れ醤油という言葉を使いました。
スーパーなどに流通している醤油は火入れがされているものなので、言い方的には火入れ醤油になります。
一年かけて自家製醤油が完成しました。
自家製醤油は量はとれませんが、一年間育てたので愛着があります。
醤油を作り終えての感想
一年間かけて醤油もろみをかき混ぜる「撹拌(かくはん)」の作業、固体部分と液体部分を分ける「搾り」の作業、味の調整を行う「火入れ」の作業を体験して、どの作業も醤油を作る上で重要な役割があることを実感しました。
日本人が液体調味料を作り出すために注いだ情熱やこだわり、そして何世紀にもわたる労力と試行錯誤を考えると、現在の醤油が誕生するまでに何百年もの蓄積された技術と知識があったことを感じました。
また醤油を手作りすることで醤油づくりの大変さ、自家製醤油では一年間かけても限られた量しか作ることができないことを実感し、醤油がどれだけ貴重なものなのかを理解することができました。
私たちが醤油を当たり前のように手軽に使えるのは、先人の努力や知恵、醤油メーカーの存在のおかげであるということを再認識することができました。
自家製醤油は量を作ることはできませんが、実際に手作りしてみることで醤油がどのような製造プロセスで作られているかが理解できるようになり、醤油というものを身近に感じることができるようになります。
毎日使うもののことを知ることは、日常の豊かさにつながることだと思います。
麹の仲間たちでは「醤油づくり教室」を開催していきます。「醤油づくりをしたい!」「醤油づくり教室を開催してほしい!」という方はお問い合わせよりお気軽にご連絡ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。