ブログで発酵教室!奄美大島の伝統的な発酵飲料「ミキ」の作り方

ブログで発酵教室
麹のお話し会(無料)

10月は9日(木)、23日(木)に開催します。
詳しくはコチラから。

かよこ
かよこ

発酵食品で腸内環境を整えたい

たかあき
たかあき

乳酸菌を自然な形で摂りたい

こーじろー
こーじろー

そんな時は、鹿児島県奄美大島で古くから作られてきた伝統的な乳酸菌発酵飲料「ミキがオススメだよ

ブログで発酵教室!第十回目は、植物性乳酸菌たっぷり!腸内環境を整えてくれる「ミキ」の作り方をご紹介します。

ヨーグルトのような香りと爽やかな酸味が特徴で、乳酸菌を豊富に含むことから「お米のヨーグルト」とも呼ばれています。

「腸内環境を整えたい方」「植物性の乳酸菌を取り入れたい方」「自然な飲み物で栄養補給をしたい方」にオススメです。

ミキは砂糖を入れて作る方法もありますが、今回は砂糖を使わず、ほどよい甘さでサッパリと飲めるミキの作り方をご紹介したいと思います。

炊飯器があれば誰でもカンタンに作れるので、ぜひ一緒に作っていきましょう。

手作りミキ
ほどよい甘みと酸味のミキ

ミキの発酵の仕組みと健康効果

ミキの原材料は、お米と生のサツマイモです。

炊いて冷ましたおかゆに、生のサツマイモをすりおろしてよくかき混ぜて、2〜3日ほど常温で発酵させて作ります。

お米のデンプンが、生のサツマイモに含まれるβアミラーゼという酵素の働きによって麦芽糖(マルトース)に分解されて、ミキの甘さが作られます。

また、乳酸菌が糖を分解して、乳酸を作り出しながら増殖していきます。乳酸菌が作り出す乳酸によりミキ特有の爽やかな酸味が生まれます。

ミキには、1mlあたりおよそ1億個の乳酸菌が含まれていることが報告されています(参考文献①『壮快 12月号』)。

乳酸菌は腸内環境を整えるサポートをしてくれるため、便通の改善肌荒れの改善なども期待できます。

ミキの歴史

ミキの名前の由来は、神事の際に神様にお供えする神聖なお酒「御神酒(おみき)」にあります。

御神酒の起源は、古代の「口噛み酒(くちかみざけ)」にさかのぼります。

口噛み酒とは、女性たちが口でお米を噛み、唾液に含まれる酵素の働きでデンプンを糖に変え、壺に吐き出し、その糖に空気中に存在する酵母が付着し、自然にアルコール発酵が起こり作られるお酒です。

17世紀になると中国から琉球王国へさつまいもが伝来しました。

お米のデンプンを人間の唾液ではなく、サツマイモの酵素により糖に分解させるようになり、現在のミキが作られるようになっていったと考えられています。

ミキは神事の際に神様にお供えする飲み物として作られてきましたが、やがて各家庭でも作られるようになり、日常的に飲まれる健康飲料として広く親しまれるようになっていきました。

ミキの作り方(材料)

  • お米:150g(1合)
  • 水 :3カップ
  • サツマイモ(皮を向いた状態):150g

サツマイモの量は50g、100gでも同じように作ることができます。

150g以上入れても問題ありません。サツマイモを多く入れることで、さつまいもの甘味やシャキシャキとした食感をより楽しめるようになります。

サツマイモ
きれいでないサツマイモを使うのがオススメ

①おかゆを炊く

お米を洗米後、水3カップを加えて1時間程度浸水させた後に、炊飯器のおかゆモードで炊きます。

おかゆ
炊けたら内釜を取り出す

②おかゆを冷ます

おかゆが炊けたら、40℃以下になるまで冷ましてください。

温度が高いと乳酸菌が死滅する可能性があるため、温度が下がってからすりおろしたサツマイモを加えるようにします。

おかゆの温度を測る

サツマイモをすりおろす

サツマイモは皮をむいたら、あく抜きと変色を防ぐため、水に15~30分程度浸しておきます。

皮をむいたサツマイモを水に浸す

すりおろしたらラップをしておかゆが冷めるのを待ちます。

すりおろしたサツマイモ

③サツマイモを加えて、よくかき混ぜる

おかゆの温度が40℃以下になったらすりおろしたサツマイモを加えて、よくかき混ぜてください。

冷めたおかゆにすりおろしたサツマイモを加える

④常温で発酵させる

よくかき混ぜたらミキの仕込みは完了です。

これからは常温で発酵させながら経過を観察しています。

ミキの仕込み完了
ラップをかける

8時間後

一日に一回はかき混ぜて、見た目や香り、味の変化など、発酵の様子を観察してみてください。

かき混ぜるとゆるさがでていました。
これはサツマイモに含まれる酵素、βアミラーゼによりお米のデンプンが分解されたためです。

まだ酸味は感じられませんでした。

発酵の様子がわかりやすく見えるように、ガラス製の容器に移しました。

23時間後

混ぜるとシュワシュワと音が聞こえてきました。

混ぜ心地はよりサラサラ、トロトロの状態になっていました。

ほんのりとした甘さと酸味のような香りが出てきました。

かき混ぜた後の様子

44時間後(1日と20時間後)

ヨーグルトのような香りが出てきました。

かき混ぜると、プチプチ、シュワシュワという音が聞こえてきました。

かき混ぜた後の様子

68時間(2日と20時間後)

ヨーグルトの香りが増していました。

前回のようにシュワシュワとした感じはありませんでした。

ほのかに酸味が出てきたように感じました。

88時間(3日と16時間後)

ヨーグルトのような香りがさらに増していました。

常温での発酵から冷蔵庫に移すタイミング

ミキは常温で発酵させるため季節(気温)や室温によって発酵の進み方が変わってきます。

冷蔵庫に移すタイミングは発酵の進み具合(見た目や香り、味の変化)を見て判断します。

今回はヨーグルトのような香りが出てくるようになり、ほのかな酸味も感じられるなったため、冷蔵庫に移すことにしました。

冷蔵庫の中でも乳酸発酵はゆるやかに進み、徐々に酸味は増していきます。ある程度常温で発酵させて、その後は冷蔵庫でゆっくりと酸味が出てくるのを待つというのも一つの発酵のさせ方だと思います。

⑤冷蔵庫で保存

小分けにして冷蔵庫に移しました。

一つは飲みやすくするためハンドミキサーをかけて、サラサラの状態にしました。

冷蔵庫で冷やすと味がはっきり感じられるようになり、より美味しく感じられます。

保存期間の目安は、冷蔵で約2週間です。
それ以上保存する場合は冷凍保存をオススメします。
冷凍したものを飲むときは、冷蔵庫でゆっくりと解凍してから飲んでください。

味見で結構減ってしまいました。

ミキの面白さ

ミキ中の乳酸菌は、原料のサツマイモや仕込み環境の違いにより異なることが指摘されています(参考文献③、④)。
そのため、サツマイモの栽培される地域や品種により、増殖する乳酸菌の種類も異なる可能性あります。

同じレシピで仕込んでも、乳酸菌の種類、味わいも違ってくるかもしれませんね。

ぜひ、自分の好きなお米とサツマイモで、オリジナルのミキを仕込んでみてはいかがでしょうか。

手作りミキ

ミキの楽しみ方

麹甘酒を少し加えると、甘味が増して飲みやすくなりました。

冷凍したフルーツと一緒にミキサーにかけて「ミキスムージー」にしたり、炭酸で割ったり、日本酒で割ってどぶろく風にして楽しむのもおすすめです。

また、オリーブオイルと合わせてドレッシングにしたり、無調整豆乳と混ぜて冷蔵庫で発酵させると、「ミキ豆乳ヨーグルト」にもなります。

ぜひ手作りミキで、発酵のある暮らしを楽しんでみてください。

麹甘酒は少し入れるのがポイント

以前、ミキを作った様子をInstagramに投稿していますので、ぜひ参考にしてみてください。
皆さんが美味しいミキを作れますように。

参考文献

1)安藤伸剛(編集人)『壮快 12月号』株式会社マイヘルス社(編集兼発行所)平成30年10月16日

2)「日本醸造学会誌 2010年 105巻 3号(掲載ページ:p.167-174)」久留 ひろみ、吉崎(尾花) 由美子、玉置 尚徳、和田 浩二、伊藤 清「奄美大島の伝統飲料「ミキ」の分析」https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan/105/3/105_3_167/_article/-char/ja

3)「日本醸造学会誌 2010年 105巻 11号(掲載ページ:p.741-748)」久留 ひろみ、玉置 尚徳、和田 浩二、伊藤 清「奄美大島の伝統飲料「ミキ」中の乳酸菌」https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan/105/11/105_741/_article/-char/ja

4)『奄美大島の健康自然飲料「ミキ」に関する研究』久留ひろみ(著者)
https://ir.kagoshima-u.ac.jp/records/1138

5)平成21年度 沖縄県工業技術センター研究報告 第12号「琉球地域の伝統飲料「ミキ(神酒)」の発酵に関わる微生物の特性 」https://www.pref.okinawa.jp/shigoto/kenkyu/1011573/1022711/1011593/1019797.htm